小説『何者』は何を伝えたい?【作者が伝えたかったことを考えてみた】

この記事は、

『何物』を読んだけど、何を伝えたかったのかよく分からなかった…

という悩みに答えた記事です。

ネタバレを含んでいるので、未読の方は注意してください。

また、作品の感想や感じた方は人それぞれです。わたし個人の勝手な解釈というのをあらかじめご了承ください。

『何者』は大学生の就職活動のリアルを描いた小説となっていて、最後のどんでん返しで心をえぐられる構成となっています。

人の本音や闇が見え隠れする小説で、人によっては「ドキッ!」としたかも知れません。

それではいきましょう。

作者が伝えたかったことは

私は『何者』から3つのメッセージを受け取りました。

・ダサくてもいいからあがこう
・10点でも20点でも答えを出そう
・自分の醜い部分を認めること

ダサくてもいいからあがこう

「理想の自分になるためには、周りから笑われてもいいからダサくてもあがこう」ということを伝えたいのではないかと思いました。

この小説は拓斗の視点で話が進むので、読者は拓斗に感情移入してしまうというトリックがあります。

また、拓斗自身を観測者としているので、拓斗の言葉をあたかも一般的な認識として受け取ってしまいます。

なのでたぶん、分厚い本をこれ見よがしに読んでいた隆良や演劇に打ち込むギンジ、必死に就職活動をする理香を見て「イタイな」「ダサいな」と共感した方もいるのではないでしょうか。

私もその一人です。

ですが、最後のどんでん返しで、一番ダサいのは観測者である私たちだという現実を突きつけられました。

ここで考えたことは、理想の自分になるためには、かっこ悪いところをさらけ出しながら努力を重ねていくしかないということです。

周りを見下して自分のプライドを守る観測者ではなく、傷つきながら何者でもないかっこ悪い自分として頑張ることが大事だということを伝えたいのかなと思いました。

最後の最後には、拓斗も観測者を卒業し、何者でもない自分として生きている描写が描かれています。

10点でも20点でも答えを出そう

自分の中にある考えを、10点でもいいから外に出してみようということを伝えたいのかなと思いました。

小説を読んでいて印象に残った言葉です。

十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ。自分の中から出さないと、点数さえつかないんだから。これから目指すことをきれいな言葉でアピールするんじゃなくて、これまでやってきたことをみんなに見てもらいなよ。

『何者』田名部瑞月

これは企画していた個展がなくなったという隆良に対して、瑞月が言ったセリフの一部です。

本当にこの通りだなと思いました。

作中でも言われていましたが、

今までは親や先生など、誰かしらが私たちの生きてきた過程を見てくれていたので、結果が出なくてもその過程を評価してくれる人がいました。

ですが、大人になるにつれて生きてきた過程を見てくれる人はごくわずかで、結果を出さないと評価してもらえません。

だからこそ、大切なのは自分の考えを言葉や行動で示すこと。

最初は低い点数でもいいから、きれいに取り繕った自分じゃなくて、これまでの自分を見せよう。

こういうことを伝えたかったのではないかと思いました。

自分の醜い部分を認めること

「人間には誰でも醜い部分あるけど、それを認めよう」というのを伝えたいのではと思いました。

拓斗は、表では目立たないながらも裏ではネットで友人の内定先を調べ、悪いコメントが書かれていたら見下すような人間でした。

理香は自分の頑張りをネットで努力中継する人間でしたし、光太郎はある意味無自覚人間だし、隆良は口だけで行動しない空想人間でした。

ただ、わたし達にも形は違えど、こういった自意識ってあると思います。

そして、そういう自意識溢れた行動は、急にやめようと思ってもやめられないものです。

だからこそ、醜い部分を認めることが大切なのかなと思いました。

誰かと自分を比べて醜い部分を実感しながら、「じゃあ自分はどうするか?」って考えて行動出来たら素敵だと思いますしかっこいいです。

小説の最後でも、拓斗は己の醜い部分を認めて前を向いて歩き始めています。

こんな風に、自分の醜さを認めて一歩踏み出すことが大切、というのを伝えたいのかなと思いました。

『何者』-概要

  • 著者:朝井リョウ
  • 第148回 直木三十五賞 受賞
  • 2016年に映画化
  • 2017年に舞台化

まとめ

今回は朝井リョウの『何者』について、伝えたいことを考えてみました。

人によって「この登場人物には共感できないな~」とか、感じ方が堅調に表れる小説だと思っています。

ぜひ手に取って読んでみてください。

わたしはもう読んでいて本当に疲れた小説でしたし、恐ろしくてもう読みたくないと思ってしまいました。

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