「リズと青い鳥」考察【希美がリズになるまでの物語】

こんにちは。

この記事では「リズと青い鳥」の冒頭シーン・中盤シーン・ラストシーン、そこからつながる「disjoint」・「joint」について考察しています。

人の考察や解釈が知りたいという方はぜひ最後まで見てくださいね。

ネタバレを含むので、未視聴の方はご注意ください。

「リズと青い鳥」考察

まず結論です。

私は「リズと青い鳥」とは、「希美がリズになるまでの物語を描いていて、それをdisjoint、jointで表現しているのではないか」という考えに至りました。

その理由について、①冒頭シーン、②中盤シーン、③ラストシーン、の3つから説明します。

拡大解釈であり、こじつけであり、妄想です。

こんな解釈もあるよね程度で楽しんでもらえたら嬉しいです。

(disjointについて、数学的要素を掛け合わせているということは、他の方の考察や監督さま・脚本家さまのインタビュー記事を読ませていただき百も承知でございます。その上でこの記事を読んでもらえると嬉しいです。)

①冒頭シーン

まずは冒頭シーンから。

ここで注目したいことは3つです。

・2羽の鳥たち
・希美の背中の後に映し出される「disjoint」
・音楽室前の希美のターン

2羽の鳥たち

冒頭シーン、校舎を歩く2人が映し出されます。

その間で2羽の小鳥たちが木に飛び込んでいく様子がありました。

冒頭の2羽の鳥に注目した理由は後述します。

希美の背中の後に映し出される「disjoint」

何度も見ているうちに疑問に思ったのですが、なぜ希美1人だけ背中が写った後に「disjoint」を組み込んだのでしょうか。

みぞれと希美の関係性を描いた映画で、「disjoint」はこの映画の肝とも言える言葉のはずです。

それならば、みぞれと希美が一緒に写っているシーンの方が良いんじゃないかと思いませんか。

ここで「disjoint」はみぞれと希美の関係に掛かっているのではなく、希美に掛かっているのではないかと考えました。

また、もう1つ理由があります。

ラストシーンで、希美が振り向く→みぞれが驚くという過程を踏んでから「disjoint」が写り、「dis」は塗りつぶされ「joint」になりますよね。

希美が振り向くというアクションをしてから、一連の流れは始まっています。

このことから、「希美が振り向かなかったら「joint」にはならないのではないか?」と考えました。

つまり、「joint」になるためには希美の行動が鍵になるということです。

だからこそ、「disjoint」は希美に掛かっていると考えました。

では、希美のどこに「disjoint」と「joint」が掛かっているのでしょう。

それは、希美がリズになること。

これに掛かっていると考えます。

音楽室前の希美の回転

希美のターンに注目して欲しいのですが、左回りで回転をしています。

この軽やかなターンはまるで翼が生えているかのような身軽さを感じさせますが、実は青い鳥も左周りで回転していることが27:00分くらいから分かります。

そして、その希美を追う形でみぞれも音楽室へ入ります。

まず、この「左」ということを覚えておいてください。

また、この時は「みぞれ=リズであり、希美=青い鳥である」ということも覚えておいて欲しいです。

つまり、音楽室前にいる希美はまだ「希美=/リズ」となっています。

②中盤シーン

次に中盤シーンについてです。

ここで言う中盤シーンとはどこなのか、これは言葉通り、大体映画の45分くらいの場面です。

みぞれが本を返すのを遅れて図書委員の女の子に詰められているところを希美が助けた帰り道の廊下の会話や演出にスポットを当てます。

ここで注目したいのは2つあります。

・みぞれと希美の会話
・その後の2羽の鳥

みぞれと希美の会話

まずは会話です。

「リズなら、私が借りたやつ貸したのに」
「…それ、だめなんだけど」
「え?」
「又貸しに、なるんだけど」
「どうした?みぞれ」
「図書館の本は、人に貸したらだめなんだけど」
「はいはい、わっかりました!」

「リズと青い鳥」:鎧塚みぞれ・傘木希美

注目したいのは、みぞれの語尾「だけど」という言葉です。

この語尾は、前のシーンで登場した図書委員の女の子を真似たものになります。

これは、主に鳥類に見られる刷り込みに似ています。(厳密には違います)

ではなぜ、「だけど」なんていう語尾を付け足したのか。

理由として考えられるのは、みぞれは青い鳥に近づいてきているということを間接的に示唆しているのではないかということ。

このやりとりの前後で、新山先生から音大に進められていることや、梨々花との関係を構築している場面があります。

よって、みぞれは青い鳥に近づいてきている、または、すでに気付いていないだけでもう青い鳥なのではないか、と認識することができます。

その後の2羽の鳥

会話の後、窓越しに2羽の鳥が飛ぶ姿を確認できます。

この映画では、2人の心情や状況を鳥に例えていると考えられる場面が何度か出てきます。

さて、ここで注目したいのは鳥の動き。

1羽は右旋回して飛び去って行って、もう1羽は飛び去る鳥を追うように飛んでいきます。

この「右」というのを覚えておいてください。

そしてこの場面、どこかで見覚えないでしょうか。

私は、このシーンが冒頭の希美の回転と酷似していると思いました。

旋回している鳥が希美、追う鳥がみぞれということです。

でも回転が逆ですよね。

これは、その後の2人の立場が反対になることに繋がってくると考えています。

このシーンはきっちり45分です。

そして、実際に中盤から後半にかけて2人の立場というものは逆転していきますよね。

これが、冒頭シーンで鳥に注目した理由です。

みぞれは青い鳥へ、希美はリズへと逆転していきます。

右回転したことで、「希美はリズへ、みぞれは青い鳥」となる

それをこの鳥たちで表現したのではないかという考察でした。

③ラストシーン

ここでのポイントは3つあります。

・図書室と音楽室を飛ぶ鳥
・ハッピーアイスクリーム
・希美の振り向き方

図書室と音楽室の窓から確認できる鳥

みぞれは音楽室で練習、希美は図書室で勉強をしています。

その時のみぞれの楽譜に注目して欲しいのですが、何か書かれています。

水色で書かれた「はばたけ!」という言葉と羽ばたく鳥の絵です。

そして、その後の図書室と音楽室の窓に注目してください。

希美のいる図書室からみぞれのいる音楽室へと、青い鳥が飛んでいる様子が分かります。

これはどういうことなのか。

私は、青い鳥は希美からみぞれに移り変わったということを視覚的に表現しているのではないかと考えています。

おそらく楽譜の言葉は、かつてみぞれの才能に嫉妬した希美からのエールです。

つまり、希美は鳥かごを開けられたということ。

そのあとの演出で、水色とピンクが混ざり合って、紫が出来上がりますよね。

あの一連のシーンで、希美は鳥かごを開けることが出来たことを表現しているのではないかということでした。

ハッピーアイスクリーム

ラストの会話で印象的なのはハッピーアイスクリームです。

この会話シーンですが、中盤と似ていると思いませんか。

似ているところは3つ。

みぞれが覚えた言葉を使っている

「〜だけど」は図書委員の女の子から、「ハッピーアイスクリーム」は葉月とみどりの会話から覚えました。

どちらもみぞれが覚えた言葉で共通しています。

このことから中盤シーンを連想させられます。

つまりこれは、「中盤のシーンと同じように進むよ」という合図なのではないのかなと。

みぞれの微笑み

そして、みぞれの反応も中盤と似ていて、彼女もまた微笑むのです。

中盤はみぞれの熱量に気付かない希美を見て微笑み、ラストはハッピーアイスクリームの意味が伝わっていないことに微笑んだ。

どちらも似通っており、なおさら中盤シーンを踏襲しているのではないかと思わされます。

進む方向

進む方向がどちらも左へと進んでいます。

このことからも、やはり中盤シーンを意識しているのではないかと感じさせられます。

希美の振り向き方

最期の注目ポイントは希美の振り向き方ですね。

まずおさらいですが、希美が振り向く→みぞれが驚くという過程を踏んでから「disjoint」が写り、「dis」は塗りつぶされ「joint」になりますよね。

このときの希美の振り向き方は私たちから見て右からです。

この「右から」というのがポイントです。

左が表している立場は「みぞれ=リズ、希美=青い鳥」でした。

では、右は?

右は「みぞれ=青い鳥、希美=リズ」となるということを示唆していると上記で書きました。

冒頭と中盤、どちらも希美は回転して振り向かず、みぞれを待たないで進んでしまう。

それは希美自身が、あの時はまだ青い鳥だったから。

でもラスト、希美は回転せずに右側からみぞれへ振り向くことが出来た。

「振り向く」という行動は、青い鳥を送るリズもやっていました。

私たちから見て右側から振り向きます。

つまり、ここで初めて「希美=リズ」になれたということ。

最初は「希美=/リズ」とつながらないため「disjoint」。

でも最後の振り向くという行動で「希美=リズ」となって、つながりました。

だからこそ、「disjoint」から「dis」は書き消され「joint」となった。

というのが考察となります。

まとめ

最後まで見ていただきありがとうございます。

今回は「リズと青い鳥」について、私なりの考察・解釈を紹介しました。

「リズと青い鳥」は、繊細ながらも独特な間合い、画面の隙間にみぞれと希美の心が流れていて、まるで音楽のような映画でした。

この記事が、本作品の新たな視点、解釈の手助けになっていたら嬉しいです。

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