かがみの孤城は全体のストーリー、中学生の心情など、すべてが綺麗な作品です。
この記事では『かがみの孤城』のあらすじや魅力、作者が伝えたかったことなど、自分なりに考えたことを紹介します。
最後まで見れば
・かがみの孤城が伝えたかったこと
・水守実生の考察
について知ることが出来ます。
『かがみの孤城』-あらすじ
学校に居場所がない「こころ」は家に閉じこもっていました。
そんなある日、部屋の鏡が光りだし、鏡の中に入るとそこには「オオカミさま」と呼ばれる少女と6人の中学生がいました。
オオカミさまは1年間の以内に城の中にある鍵を見つけることが出来たなら、願いを一つ叶えてやることを告げます。
戸惑いながらも城の中で過ごす子供たち。この6人が選ばれた意味は。
なぜこの城は存在するのか。オオカミさまの正体とは。たくさんの謎が明かされると、そこには感動のラストが・・・
孤独な7人の中学生が、かがみを通して自分と向き合う、温かい物語。
『かがみの孤城』-概要
小説
著者 | 辻村深月 |
出版社 | ポプラ社 |
2017年啓文堂書店文芸書大賞 | 大賞 |
第15回本屋大賞 | 1位 |
映画
スタッフ | 監督:原恵一 原作:辻村深月 脚本:丸尾みほ 制作:A-1 Pictures |
キャスト | 安西こころ:當真あみ 水守理音:北村匠海 井上晶子:吉柳咲良 長久昴:板垣李光人 長谷川風歌:横溝菜帆 政宗青澄:高山みなみ 嬉野遥:梶裕貴 オオカミさま:芦田愛菜 リオン(少年):矢島晶子 |
『かがみの孤城』-魅力
わたしが感じた魅力を簡単に紹介します。
ネタバレありです。
アキが未来でみんなを助ける
孤城ではアキがみんなに助けられていましたが、現実世界では学校に行けないこころたちをアキ(喜多嶋先生)が助けています。
この巡り合いが本当に感動しました。
時間を超えた助け合いが成立しているのが、本作の魅力の1つだと思います。
孤城が無くなっても、つながりはきちんとあるんだと感じさせられました。
マサムネの嘘をホントにしたスバル
マサムネが言っていた「俺の友達がゲームを作った」という嘘を、スバルがホントのことに塗り替えていました。
この構造が本当にエモいです。
こんな物語を描ける辻村深月さんが本当にすごい!
こころの願いを叶えたリオン
物語のラストシーンでリオンがこころに声を掛けました。
たとえば、夢見る時がある。
転入生がやってくる。その子はなんでもできる、素敵な子。
クラスで一番、明るくて、優しくて、運動神経がよくて、しかも、頭もよくて、みんなその子と友だちになりたがる。
だけどその子は、たくさんいるクラスメートの中に私がいることに気づいて、その顔にお日様みたいな眩しく、優しい微笑みをふわーっと浮かべる。
私に近づき、「こころちゃん、ひさぶり!」と挨拶をする。
小説:『かがみの孤城』より引用
これは、冒頭で明かされたこころのひそかな願い。
そんなこころの願いを、思ってもいない奇跡でリオンが叶えました。
ただ感動です。
『かがみの孤城』-かがみの孤城が伝えたかったこと
主に3つです。
・たかが学校だから行かなくてもいい
・いじめについて
つらい時は誰かに助けを求めてもいい
本作は「つらい時は助けを求めてもいい」というメッセージが込められているのではないかと感じました。
例えば、こころが学校に「行かない」のではなく、いじめがトラウマで「行けない」ということを母親に打ち明けています。
打ち明けたことで、母親はこころの強い味方になってくれました。
だれかに助けを求めることって、簡単なようで難しいですよね。
「どうせ話しても分かんないし、助けてもらえない」「こんなこと言ったら、どう思われるか不安だ…」「心配をかけたくない」と、いろいろな考えが巡ると思います。
でも勇気を出して助けを求めてみれば、手を差し伸べてくれる人は必ずいて、戦ってくれる人も必ずいるのです。
1人で抱え込む必要はなくて、だれかを頼る。
孤城でもお互いの悩みを聞いて、助け合って寄り添っていました。
また、こころが勇気を出して助けを求めたことで担任や真田たちとは別々のクラスになることが決まり、事態は良い方向へ向かいました。
このことから、「つらい時はだれかに助けを求めてもいい」ということを、かがみの孤城は伝えたいのかなと思いました。
たかが学校だから行かなくてもいい
学生にとって、学校は1つの居場所です。
世間では「学校に行くのは当たり前だ」という考えが、認識としてあります。
だからこそ、何らかの理由で「学校に行かない」という選択肢を取ってしまうと、「自分は社会のレールから外れているのではないか」と生きづらさを感じてしまうと思います。
ですが、かがみの孤城では「学校に行く必要はない」という提案だったり、「たかが学校」という言葉が出てきました。
「学校にこだわらなくていい」ということです。
学校から社会に繋がるわけじゃないし、行きたくないなら行かなくても良い。
こころたちがかがみの孤城という居場所を見つけたように、「学校以外にも居場所はあるよ」ということを作者は伝えたかったのかなと思いました。
いじめについて
かがみの孤城が伝えたいことで、いじめについてもあるのかなと思いました。
本作はいじめの表現が鮮明に描かれています。
こころの心情や担任の対応、真田の反省していないであろう手紙などなど。
たぶんこの作品を見た人の中には、こころの様にいじめを受けて傷ついた人や、いじめを受けた子の家族の人もいると思います。
ここで伝えたいのは「いじめはよくないよ」ということもそうなのですが、「いじめにおける理不尽さ」なのかなと思いました。
真意までは分かりませんが、真田がこころをいじめ原因は「真田の付き合った人が、過去にこころを好きだったことがあるから」なんですよね。
つまり、頭が恋愛でいっぱいだったというわけです。
自分ではコントロールできないことですし、ある意味災害ともいえる事なのかなと思います。
なので、いじめられるのは災害のように理不尽な理由であって「いじめられる側が悪いということは絶対にない」ということを作者は伝えたいんだと思いました。
『かがみの孤城』-考察
最後にサラっと気になったところを考察します。
あくまで個人の妄想になるので、ご了承ください。
ネタバレ注意です。
考察するのは
・なぜ姉のオオカミさま(ミオ)はリオンの記憶を残したのか
・水守実生(ミオ)の名前についての考察
です。
アキとリオンの記憶について
アキの記憶
作中でこころを除いた6人の孤城での記憶が残っているのか、はっきりと語られることはありませんでした。
ですが、アキは結婚する前から「喜多嶋」という苗字にシンパシーを感じていたり、大人になって初めてこころを見た時には「とうとう、この時が来た」と思っています。
このことから、アキにはかがみの孤城での思いが残されていると考察します。
リオンの記憶
リオンついては、孤城での記憶が残っていると推察します。
理由は以下です。
・閉城後、真っ先にこころを見つけて話しかけたこと
です。
では、なぜリオンの記憶は残ったのか?
なぜオオカミさま(ミオ)はリオンの記憶を残した?
原作でかがみの孤城は、リオンのために作られたものだと明かされました。
なので、孤城の出来事はリオンにとっても姉のオオカミさま(ミオ)にとっても、大切な思い出だからではないかと考察します。
なかでも特に
・孤城で姉(ミオ)と過ごした思い出
をリオンへ送りたかったのかなと思います。
孤城で過ごした雪科第五中学の友達との思い出
本来、リオンは雪科第五中学に通う予定でしたが、それは叶いませんでした。
だからこそ、孤城で雪科第五中学の生徒を集めて、リオンに友達を作ってほしかったのかもしれません。
作中でも
どうか理音と一緒に遊びたい。日本の学校に残りたがってたあの子に、出会うはずだった友達を作ってあげたい
小説:『かがみの孤城』より引用
と語られていました。
孤城で姉(ミオ)と過ごした思い出
ミオにも、リオンといっしょに遊びたいという願いがありました。
なので、かがみの孤城での生活は弟と遊んだ最後の場所であり、リオンにはずっと覚えていて欲しかったという姉心もあったのかもしれません。
水守実生(ミオ)の名前についての考察
あくまで妄想です。
ミオという名前は「勿忘草」からアイディアを受けたのかなと思いました。
「勿忘草」は別名「ミオソティス」と言って、花言葉には「私を忘れないで」という意味があります。
ここから名前をつけたのであれば、リオンの記憶を消さなかったことにもうなずけませんか?
そして、この花言葉の由来は、中世ドイツの悲恋伝説に由来していると言われています。
かがみの孤城では、孤城の外観が西洋の建物に似ていたり、物語のカギとなる「赤ずきん」と「オオカミと7匹の子ヤギ」はどちらもドイツのグリム童話に収録されているなど、西洋の特にドイツと関連深い箇所が見受けられます。
このようなことから、実生(ミオ)という名前には「ミオソティス」の頭文字がつけられたのかなと思いました。
『かがみの孤城』-まとめ
今回は『かがみの孤城』について、魅力や伝えたかったことについて紹介しました。
理不尽な生きづらさを抱えた子供たちが、寄り添いながら成長していく姿に、勇気を貰える物語です。
この記事では『かがみの孤城』が伝えたいことを3つ紹介しましたが、まだまだメッセージはあると思います。
ぜひ、あなたもかがみの孤城からのメッセージを受け取ってみて下さいね。
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