皆さんこんにちは。
この記事では私が「ガールズバンドクライ」を見て思ったことや考察を書いている記事となります。
個人的な解釈ということを前提に楽しんでいただければと思います。
それではいきましょう。
仁菜と桃香の出会い
ガールズバンドクライという物語は、熊本から東京(神奈川の川崎)にやってきた井芹仁菜と北海道の旭川に帰郷しようとしていた河原木桃香が出会って始まります。
第1話の歩道橋のシーンでは、両者のイメージカラーがネオン調で色濃く映し出されます。交差点は行く車と帰る車が行き交いますが、あのシーンは2人の境遇を車で表しているかのようでした。まさに2人の人生が交差する瞬間であり、運命の出会いと言える描写です。
地元に帰り音楽をきっぱり諦めようとしていた桃香はギターを仁菜に託します。
ここの仁菜にギターを託したくなる桃香の気持ちが何となく分かるんですよね。音楽への未練を断ち切ろうとする想いだったり、負けたくなくて上京してきた仁菜へのエール、「かっこいいと思います」と昔の自分を肯定してくれたことへのお礼の意味もあったのかなと思っています。
仁菜と一緒に「空の箱」を演奏した桃香は、もう一度音楽を続けていくようになります。ギターに書いた「中指立ててけ!」は、「負けたくない」と誓って上京してきた仁菜へのエールでしたが、再度仁奈から受け渡されることによって音楽活動を続けていく桃香自身に向けたエールにもなっているんですよね。
すばるも加わり新川崎(仮)を結成しますが、仁菜がダイダスを強く意識するようになり「桃香さんは間違っていない」と叫び、ダイダスを倒そうとバンド活動にのめり込んでいきます。
「ガールズバンドクライ」は河原木桃香の再生物語
本作の魅力って何だと思いますか?私は桃香が一度諦めた音楽と向き合っていく所だと思っています。ガールズバンドクライは、桃香がもう一度音楽の道に羽ばたく再生の物語ですがたくさんの壁がありました。
まず1つが元ダイダスメンバーへの負い目です。桃香はナナ・リン・アイに高校を辞めるよう説得し、プロの世界に引きずり込みました。「私たちは絶対に成功する!」という根拠のない自信を持って成功するために退路を断たちますが、桃香だけが抜けてしまいます。そんな桃香ですが、自分だけ抜けてしまったことによる元メンバーたちへの負い目を感じている節があります。それが第5話の「ごめん、ごめんね」というセリフです。5話で触れていたのはダイダスメンバーたちの約束でしたが、桃香だけがその約束を破ってしまったことが分かります。お酒や仁奈の力を借りてようやく吐き出すことのできた言葉は、自分だけがレールから降りてしまった負い目から来る謝罪の言葉なのでした。
また、選択をする以上、付きまとってくるのは自分の音楽が通用しないんじゃないかという恐怖。音楽が大好きだからこそ次ダメだったら立ち直れなくなってしまう。現実を知って打ちのめされてしまうなら趣味として続けるのがかしこい選択です。
「音楽やってる時は真剣で、全力で、少しでも良いモノを作りたい。自分の曲が通用するか、挑戦してみたい。でも音楽から離れると我に返る。自分は脱退して勝負から降りたんだって、本気でやる意味あるのかとか考えてるんじゃないかな」
「ガールズバンドクライ」:安和すばる
音楽へのエネルギーは溢れているのに選択の時になると臆病になってしまう。この時の桃香は自分の音楽が通用しなかった事実だけが残った空っぽの状態でした。
そんなときに出会ったのが仁菜です。
「仁菜は売れたいとか認められたいとかじゃなく、好きな歌をただ歌っていた」あの時の仁菜はあたしが好きだったあたしなんだ。あの頃のあたしなんだよ。だから、仁奈のまま歌い続けて欲しかったんだ。何にも縛られずその歌を横で聞いていたかったんだ」
「ガールズバンドクライ」:河原木桃香
退路を断つために予備校を辞める選択をした仁菜に対し、自分と同じ轍を踏ませたくなかったという想いも抱えていたことが分かります。しかしこれは、傷つきたくないから過去の思い出に縋って現実逃避をしている状態でもあります。負い目から逃げて、恐怖から逃げて逃げて、その先で待っていたのは仁菜という「過去の輝いてた桃香自身」、仁菜と組むことでやっと現実逃避できると思った矢先、厄介極まりない正論モンスターは自分で解放されようとする桃香を許しませんでした。
「私はあなたの思い出じゃない。あなたの思い出に閉じ込めないでください」
「ガールズバンドクライ」:井芹仁菜
そしてダイダスもやってきて話し合い…が始まるかと思いきやトラックに乗って逃げる桃香。ですが仁菜はそれも許しません。桃香はダイダスに「近づくな!」と言わんばかりにクラクションを鳴らしますが、やはり顔向けできないほど負い目があったのだろうと考えられます。
ですが、仁菜は優しく桃香に寄り添い、「私たちが正しかったって言いますから」と口にします。
その時、桃香が何かに気付いたよう目を開きます。仁菜の言葉はダイダス時代の理不尽な選択の時に桃香が信じていた言葉でもありました。そしてナナから発破をかけられるように「忘れないから」という言葉で、桃香の脳裏にダイダス時代に過ごした思い出が蘇りますが、ここでようやく自分だけ抜けてしまった負い目から解放されたのではないでしょうか。
そしてラスト、仁菜から桃香のすべてを肯定する言葉が送られます。
「やっぱり私、桃香さんが好きです」
「ガールズバンドクライ」:井芹仁菜・河原木桃香
「なんだそりゃ」
「決まってるじゃないですか…告白です」
桃香のすべてを肯定していることが分かります。桃香はこらえきれずに泣き叫びますが泣き叫んだ瞬間こそ、桃香が過去の自分を受け入れられた瞬間なんだと思います。だからこそ「ガールズバンドクライ」という物語は桃香の再生物語だと思わざるを得ないのです。
間違ってないから!!
このアニメに多くの人が爪痕を残されたと言いますが、その理由の一つが仁菜という人間の在り方だと思います。
自分が間違ってると思う選択は絶対にできない不器用でめんどくさい性格。人が折り合いつけようとしてるのに、それを許さず正論をぶちまけてきます。
理性すら追い越す強い感情を見ました。
あそこまでめんどくさい存在が。どうしてここまで受け入れられたのか考えました。ルックスの可愛さ、声、演出上の魅せ方は多いにあると思います。
ですが一番の理由は私たちみんな、少なからず仁菜のように「私は間違っていない!!」と叫びたい心があるからだと思っています。少なくとも私にはありました。
ごめんなさい、ここからしばらくは自分語りです、(いいですよね♪ルパさん)
私も仁菜の様に中指を立てたくなる時があります。常識や枠組み、正解や負けとか関係なく「間違っていない!!」と叫びたくなる時があります。
でもそんなことはできないんです。なぜなら仁菜みたいにあそこまで不器用じゃないから。
なので世間体を保って、自分の夢や目標に折り合いを付けて生きる選択をしましたが、落としどころを付けようとすればするほど、自分の気持ちを押し殺していることにも気付きました。だから仁菜という人間は、私が折り合いを付けようと選択した時に「こんなの間違っている!!」と叫んでいたもう一人の自分だったのです。
選択の時、仁菜のように行動できるかできないか、ただそれだけです。ですが、私は仁菜のように中指立てて「私の選択は間違ってないから!」と叫べず、周りの人間や常識や枠組みに負けてしまいました。
仁菜の選択は正しいとは思わないです。ですが、仁菜は「間違っている!」と叫べたもう一人の自分で、心の隙間にいた理想の自分なのです。だから仁菜を見ていると、ある意味桃香と同じように現実から逃げることができていたんです。
「間違ってるわよ!どう考えてもアンタが間違ってる!だってそうでしょ、そのヒナっていう子のほうがどう考えても正しいわよ!でもね、でも、だから私は惹かれたんだと思う。アンタの歌声が好き」
「ガールズバンドクライ」:海老塚智
まさにこのアニメの本質を突いたセリフだと思います。
仁菜という自分の理想を具現化した存在を真正面から描いたからこそ、私は「ガールズバンドクライ」に爪痕を残されたんだと思います。
そして、自分と同じような憤りを抱えている人は少ないはず。みなさんも心のどこかに井芹仁菜がいたのではないでしょうか。
これこそが、彼女が多くの視聴者から受け入れられて愛される理由なのではないかと考えてしまうのです。
自分語りをしたのに、最後まで読んでくださりありがとうございました。
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