【前半終了】「Bang Dream! Ave Mujica」の感想と色々な考察

こんにちは。

この記事ではAve Mujicaを7話までのストーリーラインに沿いながら、色々な考察とちょくちょく感想を書いている記事です。

断定している箇所が多いですが、個人的な解釈なのでご了承ください。

ネタバレありです。

それではいきましょう。

「Ave Mujica」感想と考察

壊れていく睦

睦が壊れていくシーンですが、睦ちゃん崩壊RTAでもやってるのか疑うくらい、彼女のやってほしくないことの本質を抑えていました。

初華の仕事の埋め合わせによってメディアに晒される日々。何より恐ろしいと思ったのが録音です。睦自身、喋るのが苦手なことに加えて、「私が喋るとダメになる」とCRYCHICの解散以降思い込んでいます。その追い打ちでレコーディングされるとなれば、一つ一つの発言に恐怖と緊張が付きまとうはず。また、インタビューも「お笑いの若葉と女優の森みなみの娘」というレッテルを貼られ、自身のことは全く見てもらえない。小さい頃からの居場所だった家のギター練習場所も、ムジカの練習場となります。バンドを壊してしまう恐れがあるから助けを求めることも出来ず、睦の心は壊れていくのでした。

瞳孔が激しく開いていたり、カメラにすっぱ抜かれるシャッター音?も睦を蝕んでいると実感させられます。睦の休まる場所は唯一のギター以外になく、ギターに抱きついている光景がただただ辛かったです。また、ギターに抱き着く時に映る月も今後の睦を暗示しているようでなおさらでした。「残念ですが、月は誰も癒しはしません」、「それどころか、どこまでも追い詰める」。睦にとってこの生活に救いは無く、この後も追い詰められていくことが分かります。まさに絶望しかありません。

全国ツアー初日。忙しすぎるスケージュールをこなしていた睦。既に激しい動機と不眠、睦は憔悴していました。着替えスペースから意識が無くなって、気付いたらステージに立っているのを想像したら恐ろしすぎる。

睦の壊れてしまったシーンについてですが、個人的にはこうなのかなと思っています。

「一度壊れてしまったら、この顔で生きてくしかありません」=睦にとってバンド活動も一生若葉と森みなみの娘としてしか見てもらえないことになる→だから「(自分の運命からは)もう逃げられない」→だれからも睦として見てもらえない→逃げ出したい恐怖で手元の震えが止まらず唯一のアイデンティティであるギターもミスしてしまう→自己の喪失→何者でもなくなり、心が限界を迎えてしまった。

睦の崩壊を描いた2話のサブタイトルは「Exitus acta probat.」(結果は行為を証明する)。睦が壊れたという結果は、4人が自分勝手であったことを証明するのでした。

どうして味方になってくれないの!?

睦の演技力を見た事務所から同じ演技をするよう打診がきます。睦のパフォーマンスはムジカの存在がより世間に知られるきっかけとなりますが、パフォーマンスを取り入れることはムジカの音楽への冒涜にもなる。

祥子やにゃむが睦の発言を求めますが、「ギターをやりたい」とも「演技をやりたい」とも言いませんでした。その理由はCRYCHICの件があったから。自身の発言がCRYCHICを解散に追い込んだことを知っているからこそ、今度こそはムジカを守り、祥子を守ろうとするのです。ムジカが壊れたら祥子は本当に壊れてしまうと分かっているからこそ、心を壊しながらも祥子の味方でいようとします。

日に日に激しくなっていくメンバー同士の言い争い。睦の頭をよぎるのはCRYCHIC解散の出来事で、一つ一つの発言がトラウマとしてフラッシュバックします。心が限界を迎えていた睦は祥子に助けを求めるために電車を降りて付いていきました。

しかし、祥子はムジカのことで頭が精一杯でした。方向性について何も言わない睦に対して「甘えないで!」と一蹴。更には禁忌の発言をしてしまうのです。

この時の祥子の気迫がすさまじくて、「お前がギターをやりたいと言わないと、わたくしは終わってしまうんだぞ!前はもっと喋ってただろ甘えるな!ギターをやりたいと言え!」ぐらいの脅迫にも思えてしまって、祥子自身も本当に追い詰められていたんだなと実感させられました。

どうしてですの…どうして味方になってくれないの!?
ムジカしか…わたくしにはもうこの世界しかないのに

「Bang Dream! Ave Mujica」:豊川祥子

睦は今までずっと祥子の味方でいたはずです。バンドを守るために、祥子を守るために、心を壊しながらもずっとそばにいました。それなのに想いは届いていなかった。助けを求めた結果、祥子との一件は心をひどく傷めることとなったのです。

そして睦は、幼い頃から一緒に居る別人格であるモーティスに成り代わるのでした。

祥子ちゃんが嫌いなモーティス

睦を傷つけた祥子を絶対に許さず、ひたすら祥子を遠ざけようとします。初華が祥子と一緒に居たいを知っていて、上手く祥子に向けるように言葉巧みに誘導していましたね。
飲み込むシーンからは想像もつかないほど、彼女は睦を心配し守りたいと思っていました。

ムジカのため、睦のため、抜群のコミュニケーションと軽快なトーク力でバンド内の不和をあっという間に解決したモーティス。ただ、ギターを弾くことだけは出来ませんでした。ギターを大事にしない睦を見かねた祥子は咎めようとしますが、睦はもう睦でないことを知ります。祥子との会話で「今の祥子ちゃんじゃ、もう戻ってこないかもね」と口にしてその場を去りますが、着実にダメージを与えてようとしていることが分かりますね。そよを軟禁している際、「いじわるな青い魔女」を赤いペンでグルグル書き殴るシーンが出てきますが、青い魔女とはおそらく祥子のことだと思われます。

正直、怖がっている祥子を見て、「いいぞもっとやれ」と言ってる自分と「もうやめてあげて」と言ってる自分で頭の中グルグルしていました。

ムジカ解散

バンドの不和を解決していたモーティスですが、ギターは弾けませんでした。それが原因でバンドは解散してしまいます。

まず、頑なに演奏に拘ろうとする祥子ですが、この時点で演奏というよりかは睦を壊してしまった事への罪悪感と悲しみでムジカやゲストのことを考える余裕が無かったのだと思っています。だからこそ、ムジカ存続の危機になっても「睦に戻ってきてほしい」としか言えなかった。

マルチタレントになりたいにゃむは、努力を惜しまず使えるものはガンガン使って成り上がってやろうと強い野心を持っています。帰ってからドラムの練習や動画撮影に打ち込む姿、仮面で見えないからといってメイクの手を抜かない様子を見るに、見えないところでも努力を惜しまない彼女の性格が見えてきますね。ただ、自分には睦のような演技の才能はないことを自覚しており、睦はムジカにいるべきではない。だからこそ祥子は睦の足枷になっていると考えています。ゲストたちがどんな気持ちでライブに来てくれているのか訴えますが、それは彼女自身が田舎出身で苦労人だから分かるのだと思います。ムジカに入った理由もお嬢様のプライドを捨てた祥子を見て、一緒に成り上がってやろうと思ったからですが、何も決断できず、睦を切り捨てる覚悟もないためバンドを抜けると宣言。祥子に「お嬢様のごっこ遊びに付き合っている暇なんてない!」と言い切ります。その言葉は祥子にとって重くのしかかるのでした。

初華についても駅のホームで言った「ムジカを解散なんてさせない、メンバーが辞めるってそういうことでしょ」という言葉がありましたが、にゃむが抜けることで自分の言葉が間接的にもバンドを解散に追い込んでしまうのでした。

ムジカは解散、それぞれ元の生活に戻ります。

わたくしは、わたくしが嫌いですわ

ムジカは解散し、普通の生活を送る祥子。父親の元で暮らしながら、ムジカメンバーたちの活躍を背に生活している姿が痛ましかったです。無言で流れていく時間が祥子の虚しさをひしひしと感じさせてくる演出で、映画の楽奈と似ていたのが印象的でした。(失くしたもの:祥子→ムジカ、楽奈→Space(ギター))

結局、祖父である豊川定治が祥子をお屋敷に連れ戻します。そして、ツアー中止にかかった違約金や賠償金を肩代わりしたことを告げるのです。

そして再び対面した大切なグランドピアノの前で、

わたくしは、わたくしが嫌いですわ

「Bang Dream! Ave Mujica」:豊川祥子

とこぼすのでした。この言葉、家を出る選択を貫けず、ぬくぬく安全な実家に戻ってきた自分の弱さとなにもかも肩代わりしてもらったことで、にゃむから言われた「お嬢様のごっこ遊び」だったことを実感したことから、自己嫌悪に陥っていると考えています。

祥ちゃん、バンドやろう!

ムジカの活動を動画で見ていた燈ですが、作曲の毛色がCRYCHICと違うことに違和感を覚えていました。ムジカにいる祥子を見て脳裏に浮かんだのは、音楽室で言われた「お幸せに…」という言葉。幸せについて考えている時、思い出したのは祥子と作曲をして星を眺めてこの瞬間が幸せと語った、光のように眩しい祥子の笑顔なのでした。祥子にとってCRYCHICで過ごした時間は本当に幸せだったことが分かります。

あの時のように笑えていない祥子を見て、下駄箱に「祥子ちゃんは幸せ?」と訊きますが、「もうやめて」と上書きされてしまいます。愛音の大活躍もあって祥子の家に上がり込むことに成功。今泣いている祥子に思いが溢れ、「CRYCHICの頃の様にまたバンドをやれば、祥ちゃんは笑ってくれるのではないか、バンドをやれば幸せになれる」、そう思いバンドに誘うのでした。

何が言いたいんだよ

ここまで海鈴について触れていませんでしたが、6話にしてようやく仮面が剥がれかけましたね。1話でにゃむに仮面を外されたときに顔色を全く変えなかったことから、彼女を覆う仮面はムジカの仮面が外れるくらいじゃ揺らがない相当なものであることが伺えます。

これまでのムジカ内のいざこざについて関与せず、一線引いて過ごしていたのが印象的です。ムジカ解散時に「遅かれ早かれ」と発言しますが、まるで解散を予期していたかのようでした。また、睦の「長くは続かない発言」に対しても顔色一つ変えていなかったり、ムジカの活動を「燃え尽きる前の線香花火みたい」と喩えています。何十ものバンドを兼任しており、数多くのバンドが解散していく所を見てきたからなのか、「続くバンドの方が少ない」と達観した一言も言っていましたね。

さて、自販機前の立希との会話でムジカの解散は薄々予感していたと語りますが、睦が苦しんでいることを知っても他人事でした。その様子に立希は呆れ、「お前本当にムジカやってたの?」と言い残し立ち去ります。そして、海鈴は吐き捨てるように「何が言いたいんだよ」と初めて敬語が崩れて言葉を放つんですね。

この言葉は本当に意味が伝わっていないのか、または立希に痛いところを突かれたことで出てしまった言葉なのか。個人的には後者だと思っています。本当に察しが悪いなら、燈の応援なんて出来ないはずだからです。燈へのエールには「自分と同じようにバンドの解散を横で見ていてほしくない」という気持ちがあったのかなと考えています。

全部忘れたい祥子と許さないそよ

羽丘生徒によって、動画で睦が苦しんでいることを知った祥子。思い出すのは睦を傷つけた言葉とモーティスからの言葉。睦が壊れてしまったのは自分のせいだったことを実感し、「わたくしがいなければ」と自分の存在も否定するように。燈から睦が会いたがっていることを知ると、「CRYCHICもムジカも睦も知りません」と過ちから逃れようと全部忘れて逃げるのでした。ここで「忘却」が繋がってきました。かつて祥子が望んでいたのは、ムジカの生活によって満たされた忘却だと思うのですが、これは自分の責任から逃れたい一心からくる忘却なのでした。

朝から羽丘の前に立ち、祥子を問い詰めます。祥子はそよの問い詰めや強制連行から逃げようとしますが、その姿はまさしく迷子でした。そよに対し、「会えるものなら…とっくに…」、「わたくしが会ったらまた、睦が」とこぼします。現実逃避したい気持ちに加えて、睦をこれ以上苦しめたくないという気持ちも伝わってきますね。ただそよから出た想いは「祥ちゃんの事情は知っている。でも祥ちゃんの行動で睦ちゃんは壊れてムジカも壊れた。だから無かったことにしないで逃げずに向き合え」(意訳)でした。

全部を無かったことにして過ごそうとする祥子は、以前のそよと同じです。かつてそよもCRYCHIC復活が望めないことを知ると、全部を忘れて諦めようとしていました。だから、祥子の気持ちが分かるのです。羽丘の校内に立ち入ったのも、燈に無理やりステージに引き上げられたから。無理やりでも祥子を引っ張って土台に立たせようとしたのです。

睦ちゃんに会わせてあげる

そよと楽奈のおかげで睦は目を覚まします。しかし、ムジカが解散し祥子が傷ついたことを知ると祥子に会わせてほしいとモーティスを説得しますが、モーティスは聞く耳を持たずに声を荒げて必死に睦を食い止めます。そよに祥子の家を教えた際の睦人形の押し込み方がかなり力ずくで少し面白かったですね。ただ、その後に「私、何のために…?」と言っていることから、モーティスもこれが本当に正しいのかどうか分からなくなってそうでした。

睦を人形にしてしまったことに向き合って想いを伝えるために何度も家に通う祥子。ついにシャッター越しで睦と出会えたと思いきやモーティスが主人格を取り戻し、割って入ります。しかし、モーティスに心境の変化が訪れるのです。モーティスにとって祥子は睦を傷つける存在でしたが、このシーンで見せた祥子の対応は睦に寄り添うことでした。今まで祥子を悪い子だと思っていたモーティスはこう思ったのではないでしょうか。「悪い子は祥子じゃなくて、2人を引き裂いている私なの?」

睦に会うため、そよ・立希・祥子は再び睦の家に。祥子は睦がCRYCHIC解散時に思っていた真実を2人に話します。そしてモーティスもその会話をドア越しで聞いていました。そして何かを悟ったようにため息をついて睦に体を返し、祥子に会わせるのです。会わせた理由ですが、祥子は睦のことを理解してもう傷つけることは無いと思ったからこそ会わせたのかなと考えています。

人間になりたいうたⅡを見てそよが笑った理由

そよはMyGO13話で、燈の歌詞を「自分の心の叫びでもあった」と言います。人間になりたいⅡの歌詞はそよの考えていた祥子への気持ちと全く一緒だったのではないでしょうか。おそらくそよはこう言いたかったはず。「だってこの歌詞、私の気持ちと一緒なんだもん」。あまりにも似すぎていて、それが可笑しくて笑ってしまった。そして、この気持ちを歌詞にできたことが素直にすごいと思って出た言葉が「燈ちゃんすごいね」。MyGO3話で初めて燈の歌詞を読んだときも褒めていましたが、あまりにも棒読みでした。その歌詞を肯定すると自分を否定することになるから。しかし、今回は心の底から褒めることができた。そよがMyGOを通して自分と向き合えていることが分かるシーンでした。

また、立希も「というかこの歌詞…」と何かに気付いている様子ですが、おそらく彼女もそよに似たような気持ちがあったのだと思われます。

更に、ライブ中にそよが何かを言っているような描写がありますが、これは「ありがとう」ではないでしょうか。「自分の気持ちを詩にしてくれてありがとう」。そんなことを思っていたのではないでしょうか。

まとめ

とりあえず、ここまでアニメムジカを見てきて思ったことはCRYCHICのわだかまりが解けて本当に良かったです。

雨降って地固まるとはまさにこのことですね。

さて、残っているのはあと4人。今後、祥子が4人とどう向き合うのか正座して見届けましょう。

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